在留資格の「永住者」と「特別永住者」の要件の違いや雇用手続きの違いを解説
出入国在留管理庁のデータによると、日本に在留する外国人は、2021年6月末において約282万人となっています。国籍による内訳は、約75万人の中国を筆頭に、ベトナム、韓国、フィリピン等のアジア諸国が上位を占め、在留外国人の過半数を占めています。
ビジネスや留学等、日本に在留する理由は様々ですが、ほとんどの外国人は一時的な在留に留まり、目的を果たせば帰国することが通常です。中には「永住」という形で、日本でずっと暮らすことを選択する外国人も存在します。
当記事では、在留資格の中でも「永住者」と「特別永住者」に焦点を当てて、法律上の定義や雇用における両者の違い等について解説を行っています。永住者等の雇用を考えている方や在留資格に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
参考:出入国在留管理庁「令和3年6月末現在における在留外国人数について」
在留資格における「永住者」とは
在留資格における一般永住者(以下、永住者)とは、一定の要件を満たし、法務大臣から永住許可を受けた外国人のことです。2021年6月末において約82万人が永住者の許可を受けています。
永住者の国籍別内訳は約29万人の中国を筆頭にして、フィリピン、ブラジル、韓国と続いており、アジア諸国が過半数を占める在留外国人数とは、やや異なった割合となっています。また、永住者は一般的な在留資格と異なり、在留期間の制限がなく、就労上の制限もないことが特徴です。
永住許可の要件
永住許可を受けるには、原則として次の要件を満たす必要があります。
- 1. 素行が善良であること
日本国の法律を遵守し、社会的に非難を受けない生活を送っていることが必要です。 - 2. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
継続的に独立して生計を営める資産又は技能を有することが必要となっており、本人の職業や年収のみではなく、配偶者等を含めて判断されます。また生活保護等の公的扶助を受けていないことも必要です。 - 3. その者の永住が日本国の利益に合致すると認められること
日本国の利益に合致すると認められるためには、原則として次の要件を満たす必要があります。
・継続して10年以上日本に在留し、在留期間のうち5年以上は就労資格や居住資格による在留であること
・納税義務や公的年金及び公的医療保険の保険料納付義務を履行し、届出等の義務を怠らず、罰金刑や懲役刑等を受けていないこと
・現に有する在留資格のうち、最長のものを有すること
・公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
ただし、日本人又は永住者、特別永住者の配偶者又は子である場合には、1と2の要件を満たす必要はありません。また、原則10年以上の在留には、次のような特例が設けられており、各々に定められた期間在留していれば、在留期間の要件を満たすことになります。
- 日本人又は永住者及び特別永住者の配偶者の場合には、実態を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ引き続き日本に1年以上在留していること。その実子等の場合は、継続して日本に1年以上在留していること
- 定住者の在留資格で5年以上継続して日本に在留していること
- 難民の認定を受け、認定後5年以上継続して日本に在留していること
- 外交,社会,経済,文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で5年以上継続して日本に在留していること
- 地域再生法に定める活動を行う一定の者で3年以上継続して日本に在留していること
- 高度人材外国人等として高度専門職省令に規定するポイント計算で80点(70点)以上を有する者であり、1年(3年)以上継続して日本に在留していること
我が国への貢献には、ノーベル賞やフィールズ賞、プリッカー賞等の国際的に権威のある賞の受賞や日本国から国民栄誉賞や勲章、褒章を受けた場合等が代表的なものです。また、外交、経済産業、文化芸術、教育、研究、スポーツの分野で顕著な成果や評価がある場合にも、我が国への貢献として認められます。
参考:永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改定) – 出入国在留管理庁
「特別永住者」とは
特別永住者とは、1991年に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により規定された在留資格又は、当該在留資格を有する者を指します。
法制定の背景には、第二次世界大戦及び戦中日本の植民地政策が存在し、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効により、日本国籍を離脱した在日朝鮮人、韓国人、台湾人及び子孫等が対象です。
特別永住者は、日本国籍を継続するか、朝鮮籍や中華民国籍に戻るかの選択肢がなかった対象者の定住を考慮し、日本への永住を認めた在留資格であり、2021年6月末において約30万人が対象となっています。
「永住者」と「特別永住者」の法律上の違い
永住者と特別永住者は、日本において永住を許可された在留資格であるという点では同一ですが、違いも存在しています。
永住者は「出入国管理及び難民認定法」に基づく在留資格であり、特別永住者は「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」を根拠とした在留資格のため、両者は根拠となる法が異なっています。
永住許可申請や証明書の申請先も異なっており、永住者は住所地の地方入国管理官署に対して永住許可申請を行い、特別永住者は住所地の地方自治体の窓口に特別永住者証明書の交付申請を行います。また、審査条件も異なっており、特別永住者は素行が善行であることや独立して生計を営む資産や技能を有すること等の要件を満たす必要はありません。
他にも、永住者は「在留カードの携帯義務」があるのに対して、特別永住者には「特別永住者証明書の携帯義務はない」等、両者には法律上の義務でも違いがあります。
「永住者」と「特別永住者」の雇用手続きの違い
永住者も特別永住者も就労上の制限のない身分系在留資格であることに違いはありませんが、在留カードと外国人雇用状況届の扱いにおいて両者には違いがあります。
不法就労防止のため、永住者を含めた外国人雇用の際には在留カードによる在留資格の確認が求められていますが、特別永住者の場合にはそのような確認は求められていません。
また、労働施策総合推進法に基づき、永住者を含めた外国人の雇用や離職の際に提出が求められている外国人雇用状況届も特別永住者を対象外としています。
「永住者」と「特別永住者」に関するよくある質問
永住者や特別永住者に関して調べていると、帰化との違いや許可が取り消される場合、身分上の扱い等様々な疑問が生じることがあります。次からは永住者と特別永住者に関してのよくある質問に対して、質問ごとに解説を行っていきます。
永住者や特別永住者と帰化の違いは?
帰化は外国籍から日本国籍になる手続きであり、帰化が認められれば、日本国籍を保有する日本人となります。対して永住者や特別永住者は、あくまで日本に永住できるだけであり、国籍自体に変更はありません。
在留期間の制限がなく、日本に住めるという点では両者は同一ですが、国籍という根本的な違いが存在しています。また帰化した場合には、永住者の場合であれば起こり得る強制送還という事態に陥ることもありません。
定住者と永住者の違いは?
定住者は、法務大臣が特別な事情を考慮して、日本への在留を認めた在留資格で、日本人の配偶者等の在留資格を持つ者が、配偶者と離婚や死別した場合等が該当します。また、配偶者との離死別等による身分上の変更の他に、難民認定を受けた外国人や日系人等も定住者の対象です。
永住者も定住者も就労上の制限のない身分系在留資格であることは同様ですが、在留期間の制限のない永住者に対して、定住者には在留期間の制限があることが最大の違いとなります。
永住許可が取り消される場合は?
永住者の在留資格は、次の場合に取り消されることがあります。
- 虚偽申請や偽造書類で在留資格を得たことが発覚した場合
- 懲役刑等を受けた場合
- 再入国許可を受けずに出国し、1年以上経過した場合
- 居住地の届出や転入転出届の提出を怠った場合
また、特別永住者も再入国許可を受けずに出国し、期限内に再入国しなかった場合には資格を喪失します。
国家公務員や地方公務員になることは可能?
永住者や特別永住者は、就労上の制限のない身分系在留資格です。そのため本人が希望すれば、どのような仕事をすることも自由です。しかし、国家公務員は日本国籍を有する者に受験資格を限定しているため、永住者や特別永住者が試験を受けることはできません。
国家公務員と異なり、地方公務員は受験に当たっての国籍要件を設けていない場合もあるため、自治体によっては永住者や特別永住者が受験することも可能です。
おわりに
永住者も特別永住者も特別な要件を満たし、日本への永住を認められた在留資格です。特に特別在留者は、制定の背景を含めて複雑な制度であるため、理解が難しいものとなっています。
当記事では、永住者と特別永住者の違いに焦点を絞り、解説を行ってきました。日本への永住を認められているという点では同一の両者ですが、雇用における扱いや法律上の義務等様々な違いが存在しており、混同しないように注意が必要です。
永住者や特別永住者の雇用を考えている方や在留資格に興味のある方は、ぜひ当記事を参考にして正しく永住者と特別永住者の制度を理解してください。
この記事を書いた人
涌井社会保険労務士事務所代表 涌井好文
保有資格:社会保険労務士・行政書士
平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
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